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そのIT化検討会が2018年3月30日に検討会取りまとめを公表したときには、日弁連の会長談話が示されております。そこでは、IT化検討会の取りまとめによって示された裁判手続等のIT化に向けた基本的方向性に賛同するという立場が明示されております。しかしながら、その時点では、具体的にどのようなIT化が進むのかということは、まだこれから検討するという段階でしたので、会長談話では、市民や事業者の裁判を受ける権利に対する配慮が不可欠であって、今後の具体的な制度設計に当たっては、裁判の公開、直接主義、弁論主義等の民事裁判手続における諸原則との整合性や、システムの利用が困難な者に対する支援措置等について、速やかに検討を進め、地域の実状をも踏まえ、全ての人にとって利用しやすい制度及びシステムを構築しなければならないといった意見が示されておりました。¶042

日弁連の基本的な受け止め方は、今申し上げたとおりだったのですけれども、弁護士一般がどのように受け止めたのかということについて、私の感想を申し上げますと、IT化を進めることについては、総論として賛成であるという意見は非常に強かったところです。そもそもIT化すべきでないという意見は、そのようなことを言う人が1人もいなかったとは申しませんけれども、ほとんどなかったように思います。しかしながら、具体的に、各論として、個別の制度や手続についてどのようにすべきかということについては、各弁護士の価値観であるとか、普段の業務でどういった依頼者を支援しているのかといったことによって考えが分かれることもかなり多くあったと認識しております。それゆえに、日弁連ではなく各単位弁護士会がIT化について意見書を提出するなどしたときには、各論部分については様々な問題意識が示されてきたという経緯がありました。¶043

次いでバックアップ体制についてですけれども、裁判手続のIT化の話が具体化するようになった際には、裁判手続のIT化はまだ日弁連の中の民事司法改革推進本部という組織の中の基盤整備部会という部会が担当しておりました。しかし、議論が本格化されるに当たり、その体制では不十分であると判断され、2018年8月からは「民事裁判手続等のIT化に関する検討ワーキンググループ」という組織を立ち上げ、そこが中心となってバックアップ体制をとってきたという経緯がございます。なお、本日のテーマではありませんが、別途協議されることになります被害者情報の秘匿については、検討のルートが少し異なっていたということで、今申し上げましたワーキンググループではなく、「民事裁判手続に関する委員会」という名称の委員会が、主としてバックアップを担当しておりました。¶044

最後に弁護士、あるいは日弁連のほうで、裁判手続のIT化について一般的に持っていた問題意識について、2点言及したいと思います。¶045

中核的な問題意識の1つは、デジタルディバイドに関するものでした。ITに習熟していない者が、IT化された民事裁判手続を適切に行うことができるのかどうかという問題です。これは、訴訟手続の当事者本人についても考えましたし、代理人についても考えていたということでありまして、本日議論されますオンライン申立ての義務化の範囲、例外の有無や内容、サポート体制などに関わる問題だったと思います。¶046

もう1つは、地域司法に関するものです。全国いろいろなところで活動している弁護士の中には、各地域における司法アクセスが後退しないことを非常に重視している者も多くおりまして、裁判手続のIT化がそれにどのような影響を与えるのかということに、強く関心が持たれておりました。この問題は、土地管轄について見直しをするのか、あるいは、ウェブ会議を利用するときの裁判官の所在場所はどのようになるのかといったところで問題になり得るところではありましたが、この研究会で後に議論する場面もあろうかと思います。¶047

笠井どうもありがとうございました。それでは続きまして、垣内さんから法制審部会の審議を含む以上の経緯や、実務家のご対応ぶりなど、それから民事訴訟IT化全般について、どのように受け止めておられるかについてご説明いただければと思います。¶048

垣内私自身は研究者の立場で法制審の部会には参加しましたので、何か出身母体との関係ということではなく、独立した研究者として検討に参加したということになるかと思います。ただ、先ほどの笠井さんのご発言にもあったのですけれども、私自身は特にITに詳しいということでもなく、また従来、特別の関心を持ってIT化について研究の蓄積があるというわけでもありませんでしたので、この機会に様々、その都度、勉強させていただいてきたわけですが、法制審部会での審議では、特にいろいろと勉強させていただくことがありました。1つには従来、漠然と当然のこととして受け止めていたようなことを、改めて考え直す必要があると感ずる機会が多かったということです。一例を挙げますと、送達などを通じた手続保障というものが、IT化というときにどういった形で具体化されるのがよいのか。最低限必要なのは何なのか、といったような問題もありました。他方で、法制審部会の審議では、研究者以外に様々な立場の方が入っておられたわけで、特に利用者の立場を代表する形でご意見を述べられる方々、企業ですとか、消費者、あるいは労働者、また審議の過程では、障害のある方からのお話を伺う機会もありましたけれども、そうした様々な立場の方々からの意見に接して、改めて民事訴訟のあるべき姿について考えさせられることが多かったように思います。¶049

IT化全体ということで申しますと、裁判手続というプロセスは、もともと一面では関係者間のコミュニケーションのプロセスとして捉えることができるものだろうと思いますけれども、そのコミュニケーションに使うことができるツールと申しますか、メディア、これは時代を追って発達をしてきたわけですが、近年は、社会生活一般でITが著しく発展をしてきたということになります。そして、その利便性には非常に大きなものがあるということからすれば、裁判手続との関係でも、その導入、あるいは活用ということは、当然の動きだったのだろうと思っております。¶050

諸外国と比較いたしますと、日本の場合には遅きに失したのではないかとそういった評価もあり得るところかもしれませんが、今回の改正は民事裁判をより利用しやすいものとするための極めて重要な一歩となるものだろうと考えております。先ほど来ご紹介のありました関連する実務家、関係者の皆さんのここまでのご尽力には研究者として、あるいは潜在的な手続の利用者として、敬意を表したいと考えております。¶051

ただ研究者としての関心からしますと、このように様々なツールが増えてくるということは、一面では便利だということですけれども、同時にどのようにそれらを使っていく、あるいは使い分けていくのが適切なのかという問題が、これまで以上に複雑で難しいものになるという感じも受けております。改正法で一応の仕切りはされているということかと思いますけれども、今後どのような扱い方、運用の在り方が適切なのかということについては、試行錯誤が重ねられることになると考えています。¶052

少し歴史を振り返ってみますと、従来、例えば口頭でのやりとりと書面の利用というような基本的な問題1つをとりましても、両者のバランスをどのように取るのがいいのか、口頭でのやりとりをどのように活用するのか、書面をどのように活用するのかといったところで、多くの議論が重ねられてきたところでもあります。様々なITツールにつきましても、今後そういった議論や試行錯誤が積み重ねられていくのかなというふうに考えているところです。それを通じて、より質の高い民事裁判手続が実現されていくということが望ましいと思いますので、研究者として、微力ではありますが、引き続き関心を持って見ていきたいというように考えているところです。¶053

笠井どうもありがとうございました。それでは最後になってしまいましたけども、杉山さんから法制審部会の審議を含む以上のような経緯や、実務家の方々のご対応について、あるいは民事訴訟のIT化全体についての受け止めについてお伺いできればと思います。よろしくお願いいたします。¶054

杉山最初なので一般的な話になりますが、現行の民事訴訟法においても、先ほど橋爪さんからご紹介があった132条の10のような規定は置かれており、また電話会議とかテレビ会議の規定も整備されていたわけですので、これまでの民事訴訟法がIT化に対して決して無関心であったというわけではなかったと思います。ただ、橋爪さんから、最近最高裁規則が整備されたとの紹介はありましたが、この132条の10を実効的なものにするための規則が長い間整備されなかったために実際にはほとんど使われていなかったり、このようなIT化に関する規定が置かれて以降、特に近時の急速な通信技術の発展であったり、国民の間でのインターネットの普及や、スマホなどの通信端末などの普及と、それに伴う国民の意識の変化に、法律も規則も対応することができなかった。その結果、他の先進諸国、近隣のアジア諸国よりもこの分野で大きな後れを取ることになってしまったと思われます。¶055

先ほど日下部さんからもご紹介がありましたが、韓国などは早くからIT化を進めておりまして、日本が遅れているということ自体は、かなり前から認識はされていました。ただ今回の改正では、その遅れを取り戻して、世界水準に達するとか、あるいは、“民事裁判の全面的IT化”という言葉自体が強調されることもありますけれども、それ自体が目的なのではなくて、あくまでも裁判の利用者である国民の司法へのアクセスを容易化し、裁判を受ける権利を実効的なものにすること、そして反射的には裁判所の事務処理を効率化したり、統計資料として活用して裁判の予測可能性を向上したりするなど、潜在的な利用者の便宜のためにIT化をする必要があったのであり、その点においては、世界の水準と関わりなくIT化は避けられなかったものと理解をしております。そのため、2017年以降この問題について短期間かつ集中的に議論をして、従来の紙、対面ベースの訴訟から、IT化された訴訟に大きくかじを切るための法律ができたことを高く評価しています。¶056

このような改正を実現するためには、また今後実際に動かしていくためには、訴訟に実際に携わる実務家の方の理解と意識の改革が重要であった、またあり続けると思われます。これも先ほど橋爪さんから少しご紹介があったようにフェーズ1のプラクティスが既に先行していたということ、さらにちょっと皮肉ではありますけれども、民事訴訟手続等IT化研究会のときは予測していなかったパンデミックの影響もあったと思われますが、特に法制審部会が始まる辺りから、裁判手続のIT化の必要性が強く、かつ広く認識、意識されるようになっていったことも影響していると思われます。そのような影響もあって、IT化が必要であり、それに向けて協力することが必要だという理解が、実務家の方から得られたということも、大きな意味があると思っております。¶057

今回の改正で、まずは民事訴訟手続自体をIT化する方向で大きく方向転換することになりますが、この改正は、現在法制審部会で議論されているような他の類似の手続にも影響があると思いますし、それ以外の民事紛争解決手続、裁判外の紛争解決手続にも影響を与えると思われます、つまり追従してIT化を進める機関が増えていく可能性もあり、その点でも非常に大きな意味のある改正であると思っています。¶058

他方で今回の改正は後に議論する予定である、オンライン申立ての義務化の範囲などでも問題となりますが、現在の通信インフラとか、現在の国民のインターネットの利用率とか、通信端末の普及率といった現状を前提として、今訴訟手続をIT化することの影響を常に意識しつつ、議論をしてきたものと、法制審部会の外から見ていて伺われました。ただ、通信を巡る技術は今後、急速に進歩、変化する可能性がありますので、今回の改正で終わりにならず、今後、短いスパンでの定期的な見直しと軌道修正をしていくことも不可欠になると思います。感想めいたものになりますけれども、以上になります。¶059

笠井どうもありがとうございました。皆様からいろいろな示唆に富んだご知見をいただきました。今のそれぞれのご発言について、相互にご質問、あるいはご意見、あるいは補足でも結構ですけれども、ご発言をお願いいたします。いかがでしょうか。¶060

垣内最後に杉山さんが言われた視点は、非常に重要な点だと私も思います。杉山さんは今回、民事訴訟のほうがIT化されることによって、裁判外の各種の手続への影響というところに、差し当たり焦点を当てて言われたわけですけれども、そういう側面ももちろんあると思います。他方で、裁判手続の外でODRの検討なども進んでいるところで、一部ではAIなどの自動化技術の活用という試みも、様々な形で進められようとしています。そうしますと逆に、そちらのほうから、また裁判手続へのフィードバックということも生じてくる、つまり、裁判手続が、そうした技術をどのようにさらに取り込んでいくのかという問題も出てくるだろうと思いますので、杉山さんが言われたように、まだこれで終わりではなく、引き続き検討が重ねられる必要があると私も思うところです。¶061

笠井ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。¶062

脇村先ほど杉山さんからご紹介がありましたので、民事訴訟以外の検討状況をお話ししますと、現在、法制審議会におきましては、民事執行・民事保全・倒産及び家事事件等に関する手続(IT化関係)部会におきまして、民事訴訟以外の民事・家事関係の裁判手続のIT化について検討しています。その検討に当たっては、まさにこの民事訴訟法の改正を踏まえた検討がされていて、民事訴訟法と違う点、あるいは同じ点などを中心に議論をしているところでございます。¶063

この部会につきましては、2022年8月5日の部会におきまして、中間試案が取りまとめられています。今後、この中間試案について、パブリックコメントの手続が予定されているところです。政府の方針としては、2023年の通常国会に関係する法律を提出することを目指すこととされており、法務省民事局においても法制審議会での議論を踏まえて、引き続き立案作業に従事する予定でございます。¶064

笠井ありがとうございます。その辺りについても、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。ほかにいかがですか。¶065

杉山先ほど言いそびれたのですけれども、今回の改正で、一般には“民事訴訟の全面的なIT化”という言葉が前面に出ていて、初めて聞く方などは、手続が全てオンラインで行われる、申立てはもちろん、法廷も全てバーチャルなものになると思われるかもしれません。そうではなくて、オンライン申立てについては、取りあえず一部の者について義務化されたわけでありますし、バーチャル法廷になるわけではないのです。そのため、今回はこのような形で改正されたけれども、将来どこを目指すのかについては、常に意識しなければならないと思っています。オンライン申立てについてはこの後議論される予定ですが、最終的には全面的に義務化を目指すことになるはずですし、訴訟記録の電子化についても同様で、つまり、e提出とか、e事件管理は全面的なIT化を目指すけれども、e法廷をどの程度目指すのかという点は、今後の運用の仕方とも関わってくるのであろうと思っているところです。もし、その辺りの見通しがあるのであれば共有させていただきたいですし、今の段階でないのであれば今後探っていく必要があると思っています。¶066

笠井ありがとうございます。e法廷の今後の見通しというお話ですけど、何かご発言はありますでしょうか。¶067

日下部弁護士の受け止め方ということで発言をさせていただければと思います。検討会取りまとめの中で、一般論で言うと、大きく2点が柱であったのかと理解しています。¶068

1つは、民事訴訟一般を念頭に置いた骨太な検討と制度設計をするという点です。この点については非常に適切であったと思います。例えば、倒産手続だけやる、あるいは知財事件だけやるといった弥縫策のような対応を取っていたとすると、その後の様々なIT化の障害になっただろうと思います。¶069

もう1つの柱が、「裁判手続等の全面IT化」という言葉で、これが先ほど杉山さんから言及もありましたとおり、ややその言葉が独り歩きをして、それを過大に、過剰に受け止めた人がハレーションを起こすという事態が、少なくとも弁護士業界の中では若干見られました。法廷の撤去ということもそうですし、想像力豊かに、裁判官がいなくなってしまって、全てAIになるのではないかというような、極端なものの見方というものも、ないわけではなかったところです。実際はそういう話ではなくて、裁判手続の入口から出口まで、ITを活用していくという話だったと思いますので、その点の理解が進むにつれて、ハレーションは治まっていったということがございました。¶070

先ほど言及のありましたe法廷の行き着く先というのは、非常に関心のあるところだと思っています。伝統的なものの考え方で言えば、とりわけ証拠調べにおいて、裁判官も、それから法廷にいる弁護士も、証人の姿を物理的に直接目で見て、その挙動や言動を感得することが重要である、という価値観が支配的です。しかし、実際にウェブ会議の利用が非常に浸透してきますと、そうした価値観を当然の前提として捉えなければいけないのだろうか、むしろウェブ会議の方式で証拠調べをすることが、例えば証人の表情を理解する上では、法廷よりもはるかに良いのではないかといった評価も聞くところです。今、証拠調べについて申し上げましたけれども、弁論についても、法廷で行うことに本質的な良さがどのくらいあるのか、ウェブ会議でそれは代替できないのかということは、今後、検討していく必要があることだと思います。¶071

笠井ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。¶072

脇村今回の改正要綱、あるいは法律の中でのe法廷等の位置付けを少しお話しさせていただきますと、今回は、e法廷の方向性について、何か、将来的に、こういった方向性をとる、例えば、将来的に、現実の法廷を廃止するといった方向性を定め、それに向けて、まずはこういった制度としようといった議論ではなく、今、現在として、どういった制度をとるべきかという観点から、当事者のウェブ会議による参加は認めつつ、少なくとも期日を開いて、そこに裁判官がおり、それを傍聴人が傍聴するという現在の仕組みは残しましょうという結論になったということだろうと思います。¶073

また、いわゆるリアルな形での法廷の出席と、ウェブ会議を利用した法廷の出席との関係については、将来は別にして、現時点での取扱いや通信技術を前提にすると、法廷での現実のやりとりとウェブ、インターネットを通じたやりとりには、やはり差があるだろうということを前提に、例えば、証人尋問のウェブ会議の利用等の要件については、厳格なもの、一般的な口頭弁論よりも厳格なものをとったというところで、結論としてはこの改正では、現実の法廷での取扱いを残さざるを得ないと言いますか、残すことを前提に、使える範囲でウェブを使おうという方向で改正要綱、あるいは法律がまとまったところだと理解しています。¶074

この改正を踏まえた、今後の方向性について、恐らく、この法制審部会に参加されたメンバー、この法律改正作業に関与されたメンバーの方々でも、様々なご意見があるのだろうと思います。そういう意味では、この改正要綱、改正法が何か方向性を決めているというわけではないとは思いますが、今後の方向性については、先ほど言った現実のやりとりの意義などを踏まえて、かつ、恐らく、今後、通信技術がどこまで発達するかといいますか、オンライン上のやりとりがどこまでリアルに近づくか、まさに、実際の通信技術、発達、進展によって決まってくることかなと思います。¶075

垣内今の脇村さんの発言に重なるところもあるかもしれませんけれども、今回の改正の非常に重要な特徴として、e法廷の関係、つまり、ウェブ会議を使った口頭弁論その他の期日に関しては、ウェブ会議を使える場合でも、それはオプションとして、選択肢として選べるというのにとどまり、期日は法廷ではやはり開かれているということですので、法廷に物理的に出頭するという可能性は、その場合でも排除はされていないということです。その意味では、従来との連続性が維持されているということなのだろうと思います。¶076

ということは、逆に言えば今後その点が非常に重い宿題と申しますか、検討課題として残されているということで、いつ、どのような条件の下で、法廷に本当に代わる、法廷がない形でもe法廷というものが実現可能なのか。当事者の同意があればできるということなのか、あるいは、そのほかに様々な条件が必要なのか。そのことは一面では通信技術の発達の度合い、どういう技術が使えるのか、その質がどうなのかということにも関わりますでしょうし、またその技術によって何が可能になり、そのことが裁判にとってどういう利点を持つのかということの評価にも関わるというところで、今後いろいろ難しい宿題が残っているということなのだろうと受け止めているところです。¶077

笠井ありがとうございます。他にはいかがでしょうか。私も個人的に、e法廷という意味では、『法律時報』の特集で、これには杉山さんや垣内さんも入っておられたと思いますけれども、e法廷のところを書いて、そのときにもやはり全面IT化ということは、法廷に来ないのが普通になるのではないかという誤解が確かにあったように思いましたので、そこは違うという話を書いた覚えがあります(笠井正俊「e法廷とその理論的課題」法時91巻6号〔2019年〕18頁)。まさにその辺りが重要で、先ほど日下部さんからもお話があった弁護士さんのご心配には、土地管轄の問題等にも関係している部分があるところで、今後どうなるかは、いろいろ考えていかないといけないと思います。¶078

今回の改正が施行された後の話としては、法廷に是非行きたいのだという意向が、実際の期日指定においてどのように考えられるのかという問題があります。ウェブならばその期日に参加できるけれども、法廷に行きたい。その当事者や訴訟代理人が法廷に来ることを前提にすると、その日は期日が入らないというような場合、裁判長の期日指定や訴訟指揮はどうあるべきかといったことです。実務的かつ細かい話かもしれませんけれども、重要な問題としてあるのではないかと個人的に思っております。¶079

第2回に続く)¶080

[2022年8月7日ウェブ会議にて収録]¶081