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事実

Y社(被告・被控訴人)は、機械式駐車装置の販売、据付、保守並びにビル及び駐車場の管理等を目的とする株式会社である。顧客から札幌市近郊の機械式立体駐車場のメンテナンス業務(定期点検及び緊急対応)を請け負っており、夜間・休日を含めて24時間・365日、依頼に応じてメンテナンス対応をしている。X(原告・控訴人)は、Yの従業員として機械式駐車場のメンテナンス等の業務に従事している。¶001

Yは、夜間・休日における業務に従事させるため、2名の従業員に対し、平日夜間(午後5時30分から翌日午前8時30分まで)及び休日(午前8時30分から翌日午前8時30分まで)の当番(「ベル当番」)を割り当てている。当番となった従業員は、Yから携帯電話を交付され、当番時間中に顧客からYに対して不具合等の電話があった場合には、当該携帯電話に転送されるなどして、当番従業員が電話で顧客に対応し、必要に応じて現場において緊急対応を行う。夜間の場合には、原則Yの留守番電話にメッセージが残され、それがP待機(メインの当番として第一次的に顧客に対応する当番)の当番従業員の携帯電話に優先的に転送され、その従業員が対応する。P待機の当番従業員が応答できなかった場合に、A待機(P待機が対応できない場合のサブの当番)の当番従業員の携帯電話に転送される。現場対応する際に自動車を運転するため、当番従業員は飲酒を禁止されており、札幌市から遠方へ外出することも事実上できない。当番従業員には当番手当(夜間当番につき1回1500円ないし2500円)が支払われているが、本件で争いとなっている夜間の時間帯(午後5時30分から翌日午前8時30分まで)については、実作業時間等の割増賃金のみが支払われ、不活動待機時間に対する割増賃金は支払われていない。¶002