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Ⅰ はじめに
少子高齢化やグローバル化、新規技術の発展など社会環境の急激な変化を背景として、終身雇用を前提に、企業がキャリア開発を主導するのではなく、労働者が自律的・主体的にキャリアを開発・形成することの重要性が増している1)。労働者が自らのキャリアデザインを考えるに際しては、職業キャリアを含めたライフキャリアの中で進みたい・進むべき方向性を自己決定していくことが求められるが2)、その際、無視することができないのが、ライフイベントである。ライフイベントの中には、自らが望んで引き受けるものだけでなく、意向に関わらず受け入れざるを得ないものがあり、また、予期できるものとできないもの、キャリアブレイクのリスクを孕むものも含まれる。本稿ではまず、労働者の就労継続に困難をもたらしうるライフイベントを取り上げ、それぞれに対し、現行法制・法施策がどのように対応しているか(いないか)を確認する。また、各制度や各施策に共通する特徴やそれぞれの課題等を踏まえた上で、今後の法政策や解釈論の方向性について試論を提示することを目的とする。¶001