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Ⅰ はじめに

長期雇用システムや労働市場の変容に伴い、労働者の主体的なキャリア形成への支援や外部労働市場を通じた労働力需給の調整が重要な政策課題とされている。こうした課題とともに副業・兼業の促進が掲げられている。従来、副業・兼業を認めない企業も多く、特に長時間労働を前提とする働き方では、労働者も副業・兼業を行うことは少なかった。ところが、雇用の流動化や多様化に伴い、副業・兼業は、労働者のセカンドキャリアや起業の手段、オープンイノベーション等の観点から普及に向けた政策が掲げられるようになった。令和4年内閣府調査1)では、副業・兼業を実施あるいは実施していないが関心がある者の割合は約65%と、労働者の意識も高い。また、同年経団連調査2)では、自社の社員が社外で副業・兼業することを「認めている」または「認める予定」の回答割合が70.5%、常用労働者数5000人以上の企業に絞ると83.9%にのぼる。加えて、副業・兼業を認めている企業の約4割が「多様な働き方へのニーズの尊重」や「自律的なキャリア形成」といった点で効果を感じている。¶001