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Ⅰ 課題設定

戦後日本の職業訓練・能力開発に関する法制度の沿革には、2つの転機が存在する1)。すなわち、1974年の雇用保険法制定前までは公共職業訓練を基軸としていたが、同法制定後からは企業内職業訓練を基軸としており、1997年の職業能力開発促進法改正からは個人主導が強調されるようになる。しかし、個人主導という政策理念に対応する法制度の展開は内実の点で乏しい。総じて、この領域の法制度をめぐる従来の議論では対立軸や論点が明確にされず、職業訓練機会の拡大と多様化が通底する大義名分となっており、職業能力開発促進法は当該施策を行政が総合的に行うための法にとどまっているといえる。個人主導を具体化する施策に乏しいのは、企業での裁量的な人事政策と対立すること、企業を離れた場での職業訓練についてはそれを支える生活保障の仕組みが必要になることによると解される。企業主導を基軸とする現行法のなかで、個人主導の仕組みを定着させることのパラドックスが顕在化している。¶001