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Ⅰ はじめに

転職支援サービスのコマーシャルを目にすることが、日常的となっている。それは、学校卒業後に就職した企業で定年まで働くことが当たり前ではなくなってきているのではないか、労働市場の流動化が進んでいるのではないか、という感覚を抱かせる。厚生労働省「令和4年版労働経済の分析」によれば、わが国の労働移動の動向については、女性やパートタイム労働者で離転職者が増加している傾向もみられるものの、男性や一般労働者を含めた労働者全体では顕著に労働移動が活発化している傾向はみられず、また、諸外国と比較して、わが国では勤続年数が10年以上の労働者の割合が比較的高く、ひとつの職場で長く働く労働者が多い傾向にあるが、産業間や職種間などのキャリアチェンジを伴う労働移動は学歴の高い層で活発化している可能性があり、職種間の労働移動において就業構造の変化への寄与度が高まっている傾向がみられる、と分析されている1)。そうすると、上述の実感ほど労働市場の流動化は進んでいないようだが、その動きがあることは窺える。¶001