はじめに――何が問題なのか

近年、諸外国も含め、「働き方の多様化」が提起する論点が活発に論じられている。本稿が対象とする社会保障の観点からは、「フルタイムの正規労働者」を核として構築されてきた従来の社会保障が、短時間労働、派遣、兼業、副業といった様々な雇用労働のあり方、さらには、労働契約を締結しないフリーランスのような働き方にどのように対応できるかが問題となる1)。また、これと重なるが厳密には異なる視点として、「職場あるいは取引先に赴いて、まとまった・定期的な時間にわたり就労する」働き方をスタンダードな働き方と捉えれば、情報通信技術等を活用して、場所や時間にとらわれずに――自宅で、外国で、好きな時間帯に、細切れの時間を使って――働くことを、「多様化」と捉えることもできる。この意味での働き方の多様化は、上述した兼業・副業・フリーランスといった働き方と密接に結びついているのと同時に、社会保障との関係で、労働時間の把握の難しさ等から、例えば労災における業務の危険性や傷病との因果関係の把握が難しくなる、あるいは、社会保険の適用が技術的に一層の難しさを帯びる、といった論点をあわせて提起する。