Ⅰ. 労働法とコンプライアンス

1. 問題状況

かつて、労働法は、一部の経営者において、道路交通法と同じくらい、違反して当たり前の法律と思われていたことがある。言うまでもないが、これは言葉の綾であり、道路交通法と同様、労働法がわが国で全く守られてこなかったという意味ではない。あくまで全般的な労働法上の規制を遵守していることを前提に、しかしサービス残業が常態化しているなど、労働法上の規制に適合しない事態が一部に存在するとしても、それが取り立てて問題と考えられてこなかったという意味に過ぎない。