左から、野村修也、國廣 正、佐々木清隆、松木和道

Ⅰ. コンプライアンスとの関わり

野村本日は、企業のコンプライアンスの現状と課題について話し合ってみたいと思います。そこで、まずは自己紹介を兼ねまして、皆さんの企業コンプライアンスとの関わりについて、簡単にお話しください。國廣さん、佐々木さん、松木さんの順でお願いいたします。

國廣弁護士の國廣です。私はもともと町弁で、一般市民の事件をやっていて企業法務はやっていませんでした。1997年に山一證券が破綻するという事件が起きて、そのときに「社内調査委員会」というものができました。これは2600億円という簿外債務が原因で山一は破綻したと言われているけれども、なぜ破綻したのか、その原因を作ったのは誰なのかという原因究明をやれという職を失う社員の声に押されてできたものです。そこに、顧問弁護士ではない外部の弁護士ということで、私がその一員となって調査をしました。これは、清武英利さんの『しんがり』(講談社、2013年)というルポルタージュに書かれています。日本の大企業の経営者たちが、いかに本質に向き合わずに先送りを続けていたのかということ、それから官を頼る、当時の大蔵省を頼って自分で物を考えない、そして当時の大蔵省が見て見ぬ振りをしていたのではないかと、そういうようなことを調査報告書に書いて、対外公表しました。これは大きな話題になり、非常に注目されたわけです。それが現在の「第三者委員会」、すなわち企業が大規模不祥事を起こしたときには、外部の弁護士などが入って、徹底調査をして、事実を明らかにするという実務のきっかけになったのです。この事件に関与し、調査報告書を書いたというのが、私の最初のコンプライアンスとの関わりです。ただし、当時はコンプライアンスという言葉はありませんでした。ステークホルダーなどという言葉もなかったのですが、不祥事の原因を究明し、それを世の中の人にしっかりと報告するという、これが今で言うステークホルダー論ですけれども、そういうことから始まったわけです。