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Ⅰ 過半数代表者制度の「転換」

厚生労働省が2025年1月8日に発表した「労働基準関係法制研究会」(以下、「労基関係法制研」)の報告書(以下、「本報告書」)には、「労使コミュニケーション」という項目が設けられている。労使関係の円滑化のために労使コミュニケーションが必要であり、望ましいものであることに、異論はなかろう。ただ、労使コミュニケーションの意味内容は必ずしも明確ではない1)¶001

この点、本報告書では、「労使コミュニケーション」はもっぱら「集団的労使コミュニケーション」に限定され、その内容は過半数代表者制度の見直しに重点が置かれている2)。労基関係法制研の前に開催されていた「新しい時代の働き方に関する研究会」の報告書(2023年10月)では、働き方の個別化・多様化、非正規雇用労働者の増加、労働組合組織率の低下といった現状認識を前提に、企業内で多様な働き方をする人の声を吸い上げ、それを労働条件の決定に反映させるために、現行の過半数代表者や労使委員会の制度の実効性を再検討し、「多様・複線的な集団的な労使コミュニケーション」の在り方を検討する必要性が説かれており(19頁)、その流れを受けて、本報告書では「適正で実効性のある労使コミュニケーションの確保」という観点から、過半数代表者制度の見直し(とくに「適正選出」と「基盤強化」)が提言されている。¶002