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本稿では、2025年1月8日に公表された「労働基準関係法制研究会報告書」(以下、単に「報告書」といい、当該研究会を単に「研究会」という)における総論的論点のうち、労働基準法(以下「労基法」という)上の労働者性にかかる諸問題について考察する1)。なお、本稿で「労働法」という場合、個別的労働関係法を意味するものとする。¶001

Ⅰ 議論の前提として

1 労働者・非労働者の法的地位

労働法は最低労働条件や安全衛生・労災補償等に関する保護規定を置き、公法的手段(罰則・行政監督)により履行確保しているところ、その適用対象者は労基法上の労働者であり2)、これに該当しない者は原則保護の対象外とされてきた。労基法上の労働者でない場合、事業者であれば取引条件の適正化は主に経済法が担うことになるが、優越的地位の濫用禁止(独禁2条9項5号)は抽象的な構成要件の下で違反の有無を事案ごとに判断するため、特定の最低基準を一律に適用していく労基法と異なり保護の有無について予測可能性が低い。また下請法も、その適用範囲の狭さゆえに、近時増大している個人事業者(フリーランス)への保護としては不十分であった3)¶002