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Ⅰ はじめに

労働基準法(以下「労基法」)上の「事業」概念は、今般の労働基準法制の見直し議論の初期から、主要な検討対象の1つとされていた1)。そして、本特集が取り上げている「労働基準関係法制研究会」(以下「労基法制研」)の報告書(2025年1月8日。以下「労基法制研報告」)でも、総論的課題の1つとして掲げられるに至っている。¶001

もっとも、同じ「事業」という表現のもとに、その複数の側面が取り扱われていることには注意を要する。経緯の詳細は紙幅の関係上割愛せざるをえないが、「新しい時代の働き方に関する研究会」(以下「新しい働き方研」)および労基法制研の議事録・資料をみると、事業概念は、主に規制単位ないしはコミュニケーション単位としての機能を念頭にその課題が議論されてきた。それが、議論の過程で、国際的適用範囲との関係、および、人的適用対象との関係も、あわせて取り上げられるようになったようである2)¶002