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 事実の概要 

⑴ X組合(原告・控訴人)は、A社に雇用され、A社が受託する国際基督教大学(以下「大学」という)での保安警備業務に従事していた労働者Bの加入する労働組合である。本件は、大学がBの解雇に関するX組合からの団体交渉の申入れに応じなかったことは労組法7条2号の不当労働行為に該当しないとしたY(中央労働委員会─被告・被控訴人)の命令(以下「本件命令」)の取消しを求めた事案である。¶001

大学による不当労働行為の成否に関わる事情は以下のとおりである。平成13年4月、大学の保安室長Cは、A社の現場責任者であるDおよび常務に対し、Bが大学の女性職員に対してお茶や食事に誘っているという噂話があることを伝え、警備員の教育を徹底するよう依頼した。同年11月、A社は、大学の女性職員に対し性的嫌がらせ行為(以下「本件セクハラ行為」という)を働いたこと等を理由にBを解雇した(以下「本件解雇」という)。平成16年、A社の顧問弁護士からの助言を受け、大学が本件セクハラ行為に関する事実の調査を行ったところ、15、6年前ないし約6年前に大学の職員が警備員に食事等に誘われた事実は判明したが、その警備員はBではなかった。平成17年4月、BはA社を相手取って雇用契約上の地位確認訴訟を提起した。平成18年3月、A社は解雇の実際の責任はほとんど大学にある旨主張したうえでBの請求を認諾し、解雇を撤回した。¶002