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本書は、経済法学の泰斗である舟田正之氏による待望の総論書であり、同氏による長年の研究の集大成としてとりまとめられたものである。実定法としての独占禁止法の概説書等は多数刊行され、その中には『経済法』というタイトルが付されるケースもあるが、本書が経済法に属すると整理する法領域ははるかに広範である。すなわち、独占禁止法や下請法など「競争法」と総称される法律群のほか、電気事業法、電気通信事業法などによる公的事業規制その他の経済的規制法、国・地方自治体が経済活動を行う等の各種の給付行政に関する諸法が含まれる。たしかに、経済法を、経済体制とそれを支える法秩序という面から、経済と国家との多面的な結びつきにおいて捉え、資本主義経済の諸段階に応じて、国家が積極的に経済に介入する等、近代市民法から現代法へと発展する過程の中で理解しようとするなら、これら歴史の中で生成・展開したさまざまな法制度や法規範のすべてを研究対象とするしかない。こうした視座に立ち、経済法が研究対象とすべき広範かつ多様な諸規範を総覧・整理して、全体の法秩序の中で理論的に位置づけ、「経済法固有の法原理は何か」という問いを立てて体系化するという作業は、ちょっと考えただけでも気が遠くなるような膨大な時間とエネルギーを要する取組みであることがよく分かる。長年、歩みをとめることなく経済法学の第一線で活躍してきた著者ならではの挑戦であり、本書が大変読み応えのある研究書として刊行されたゆえんである。¶001