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犯罪被害者(その遺族を含む。以下「被害者」という)の損害回復は、現在でも残されている課題だといえる。というのも、すでに導入されている刑事和解や損害賠償命令では、債務名義は得られても、実際の損害回復につながっていないからである。その最大の原因は、本書「はしがき」でも指摘されているとおり、被害者が被った損害を補填する責任は犯罪者にあるのに、犯罪者に資力がなければ「無い袖は振れないから無理」とされてしまうことにある。わが国の刑事政策、被害者学の第一人者である著者は、本書でこの課題に果敢に取り組み、われわれ司法関係者の思考停止にも一石を投じている。¶001