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条約は、戦争により「壊」れるのか、それとも戦争に「耐」えるのか。戦争は多様な影響を社会に及ぼす。当事国の条約関係も例外ではない。もっとも、不履行のような事実上の影響と異なり、法関係の改廃が生じるには法的な根拠を要する。¶001

伝統的に、戦争は、交戦国の条約関係、特に交戦国間の条約関係を終了又は停止させる事由ないしかかる権利を生じさせる事由とされてきた。つまり、条約は戦争で「壊」れるものとされてきた。「戦争が条約に及ぼす効果」ないし「武力紛争が条約に及ぼす効果」と呼ばれる主題(以下、「本主題」)である1)。ただし、本主題は「不明瞭な主題」として知られる2)。いかなる条約にいかなる帰結が生じるかにつき、交戦国間の条約関係は原則としてすべて消滅するという見解、停止するという見解、及び効果は多様であるとする見解があり、さらに、効果が多様であるとして効果同定基準の不一致が実行と学説でみられてきたからである3)¶002