はじめに
2022年2月24日に開始されたロシアによるウクライナ侵略に関連する国際法上の問題(ウクライナ問題)につき、刻々と変化する情勢を理解しそれを踏まえて検討するためには、速報性という点において、インターネット上の情報を活用することが不可欠となっている。他方で、関連する情報はインターネット上に溢れており、そうした情報を収集することができるウェブサイトも無数にあると言ってよい。そうした中で主なものとしては、同問題に関連する情報をまとめたサイトに加え、国際機関や国家機関などの公式サイトや、学術団体が作成しているニュースサイト、ブログサイトなどを挙げることができる。¶001
ここでは、本特集を読む際に、読者がそうした情報収集可能なサイトに関する概観を得られるよう、本特集および『法学教室』509号(2023年2月号)の特集「戦争と法学」で参照されたサイトを中心に紹介したい。なお、各サイトに関する情報は、本記事公開当時のものであり、その後の更新を反映するものではない。¶002
Ⅰ ウクライナ問題まとめサイト
1 ウクライナ問題関連
① ロシア・ウクライナ紛争(2022年)国際法情報ページ¶003
根岸陽太西南学院大学法学部准教授、二杉健斗大阪大学大学院国際公共政策研究科准教授、平野実晴立命館アジア太平洋大学アジア太平洋学部助教が作成したもの。学生向けだが、一般向けにも大変有用。「関連文献」(類似のデータベース・文献リスト)も大変参考になる。そこからさらにリンクを辿ることもできる。¶004
② ウクライナ問題国際法関連情報¶005
濵本正太郎京都大学大学院公共政策連携研究部・大学院法学研究科教授(国際法)のウェブサイトの一部(2②も同じ)。ロシアによる軍事侵攻開始直後の動きに詳しい。¶006
2 (参考)国際法全般
① 国際関係リンク集¶007
国際法学会(JSIL)作成。国際法・国際関係全般に関わるサイトを集めたもの。¶008
② 国際法・国際機構法受講生のための学習資源¶009
濵本正太郎京都大学教授(国際法)のウェブサイトの一部。学習用だが一般向けにも大変有用。¶010
Ⅱ 国際機関
ウクライナ問題に関わる国際機関も多岐にわたる。国際連合および関連機関のほか、ヨーロッパ中心の機関の活動が顕著である。¶011
1 国際連合および関連機関
(1) 全体
① 国際連合¶012
② 主要機関¶013
③ 専門機関等¶014
④ リサーチガイド¶015
⑤ 国連資料リンク集¶016
⑥ 文書検索システム¶017
⑦ 国連の文書記号¶018
⑧ 国連ウェブTV¶019
①~③は 国連、主要機関、専門機関等へのポータルサイト。④以下は、決議などの文書類や動画データを検索する手掛かり。決議番号および文書記号(⑦参照)が分かっていれば⑥で検索できる。なお、⑧の中で、国際法の論点に関する解説動画(Audiovisual Library of International Law)を見ることもできる。¶020
(2) 総会
① ポータルサイト¶021
総会に関する概要(About)、会期の記録(All Sessions)、会合記録(Meetings)、文書類(Documents)、主要委員会(Main Committees)、プレスリリースなど(Newsroom)、総会議長挨拶(President)などを見ることができる。¶022
② 緊急特別会期¶023
ウクライナ問題が議論されている、通常会期ではない、緊急特別会期のポータルサイト。ここに決議や会合記録も含まれている(①の会期の記録からも見ることができる)。決議採択時の会合記録はこちらを参照。¶024
(3) 安全保障理事会
① ポータルサイト¶025
安保理に関する概要(About the Council)、現在の理事国(Members)、会合記録(Meetings)、文書類(Documents)、現在課されている制裁に関する資料(Sanctions)、プレスリリースなど(News)を見ることができる。¶026
② 決議¶027
安保理決議が採択されたというニュースに接した際には、文書類(Documents)→決議(Resolutions)へアクセスし、採択年を選び、決議番号や日付を手掛かりに探すことができる。当該決議の採択に関連する議事録は、会合記録(Meetings)→会合記録および成果(Meeting Records and Outcomes)へアクセスし、会合年を選び、日付などを手掛かりとして、当該決議案やそれに関する議事録(会合記録)を探すことができる。¶028
③ 会合記録および成果¶029
採択されなかったというニュースに接した際には、会合記録(Meetings)→会合記録および成果(Meeting Records and Outcomes)に行き、会合年を選び、日付を手掛かりに当該決議案やそれに関する議事録(会合記録)を探すことができる。採択された決議に関する議事録も同様。¶030
(4) 関連機関
① 人権高等弁務官事務所(UNOHCHR)¶031
② 難民高等弁務官事務所(UNHCR)¶032
③ 国際移住機関(IOM)¶033
④ ユネスコ(国連教育科学文化機関・UNESCO)¶034
ウクライナ問題では、人権問題・難民問題も焦点となり、文化財の破壊も問題となっている。被害者や難民に関するデータやそうした問題に関連する報告書などが得られる。②・③駐日事務所には特設ページもある。¶035
⑤ 国際海事機関(IMO)¶036
黒海を経由する穀物に関する「黒海穀物イニシアティブ」を中心に、「黒海およびアゾフ海における海洋の安全保障および保安」のための取組を特集している。¶037
⑥ 世界貿易機関(WTO)¶038
ロシアに対する制裁は世界貿易機関協定との関係でも問題となり、過去のパネル報告書との整合性なども議論される。¶039
(5) 関連司法機関
① 国際司法裁判所(ICJ)¶040
国連の主要な司法機関。ロシアによる軍事侵攻について、ウクライナがロシアを訴えている。¶041
② 国際刑事裁判所(ICC)¶042
国際刑事裁判所は、ロシアによる軍事侵攻開始当初から活発に活動している。2023年3月17日にはプーチン大統領への逮捕状が発付された。¶043
2 地域機関
① 欧州安全保障協力機構(OSCE)¶044
OSCEは2022年の開戦前から、ロシア・ウクライナ間の停戦監視等に関与しており、関連する報告書などが得られる。¶045
② 北大西洋条約機構(NATO)¶046
とくに「ウクライナとの関係」と題した特集ページが有用。¶047
③ 欧州評議会(Council of Europe)¶048
CoEは、2022年3月16日にロシアを除名した後、2023年5月16日には「ロシアによるウクライナ侵略により生じた損害を登録する機関」(損害登録機関)の設立を発表した。日本も準加盟国としてこれに参加することを決定した。¶049
④ 欧州人権裁判所(ECtHR)¶050
ウクライナ東部における人権侵害および2014年マレーシア航空MH17便撃墜について係争中。¶051
⑤ ヨーロッパ連合(EU)¶052
とくにウクライナ問題に関する特集ページが有用。¶053
⑥ ウクライナに対する侵略犯罪の訴追のための国際センター(ICPA)¶054
2023年7月3日に発足。ロシアによる侵略犯罪の証拠収集や分析を行う。侵略犯罪を裁くための特別法廷の母体となることも想定されている。¶055
Ⅲ 国家機関
ウクライナ問題に関わる国家機関は、関係する国の数に加え、様々な機関(大統領府および首相官邸、外務省、防衛省、財務省、経済産業省、運輸省、水産庁、宇宙機関など)が関与するという点で、無数に及ぶ。ここでは特集で取り上げられたものを中心に、ごく一部を紹介する。¶056
1 ロシア
① 大統領府(クレムリン)¶057
2022年2月24日の大統領演説などを見ることができる。なお、同演説の日本語訳についてはこちらを参照。¶058
② 国連代表部¶059
2 ウクライナ
① 大統領府¶060
② 議会¶061
③ 外務省¶062
④ 検察庁¶063
ウクライナ侵攻でロシア軍が実行したとされる国内犯罪の認知件数がわかる(サイト中央の図表は、お使いいただくデバイス・ブラウザ等によって異なるが英語版のスライドも表示可能〔Chromeでは表示可能であることを確認済み〕)。¶064
3 米国
① 国連代表部¶065
② 財務省¶066
③ 国防総省特設ページ¶067
4 英国
① 政府特設ページ¶068
5 日本
③ 財務省特設ページ¶071
④ 経済産業省特設ページ¶072
⑤ 防衛省特設ページ¶073
本特集・岡野論文で扱った「法の支配外交」への取組(①・②の各ページを参照)やウクライナ問題に対する日本政府の取組に関する資料を見ることができる。¶074
Ⅳ NGO
① 赤十字国際委員会(ICRC)¶075
ウクライナ問題を含む世界の紛争地での人道活動に従事。駐日代表部のサイトもある。¶076
② アムネスティ・インターナショナル¶077
人権関連の調査報告を活発に行っている。¶078
③ ヒューマン・ライツ・ウォッチ¶079
ロシア・ウクライナ紛争についてもこちらで特集している。¶080
④ ウクライナ公式特設サイト「ロシアはウクライナを侵攻した」¶081
EU、英国、米国の支援を受けてNGO「Brand Ukraine」が運営するウクライナの公式特設ページ。¶082
Ⅴ 新聞・ニュースメディア(ABYZ News Links)
各国の動きや見方、識者の見解などを知るためには、下記をはじめとする国内外の新聞・ニュースメディア等も重要。¶083
① タス¶084
② プラウダ¶085
③ ウクルインフォルム通信¶086
④ BBC特設ページ ¶087
⑤ ユーラクティブ特設ページ¶088
⑥ NHK特設ページ¶089
⑦ 日本経済新聞特設ページ¶090
⑧ 読売新聞特設ページ¶091
⑨ 朝日新聞特設ページ¶092
⑩ 毎日新聞特設ページ¶093
⑪ 産経新聞特ページ¶094
Ⅵ 学術団体等によるニュース・ブログ
近年様々な学術団体・出版社等がウェブサイトを整備し、そこで国際法に関連するニュースやそれらに関する比較的短い考察(ブログ記事)を掲載することが増えており、それらの中で、ウクライナ問題も頻繁に取り上げられている。ブログ記事は一般に、通常の新聞等に掲載されるものよりは長く、また専門的な記事であり、雑誌論文よりは短いが速報性が重視される。これらはメールアドレスを登録すると自動的に配信されてくる。これらのまとめサイトも存在するが、その紹介とともに、代表的なものをリストアップしたい。¶095
なお、最近は紙媒体から出発した雑誌においても速報性・利便性が重視され、その刊行前から掲載論文等が当該雑誌のサイトで閲覧可能となる例も増えているが、それらについては割愛した。¶096
1 まとめサイト
① 国際法リサーチガイド(国際法ニュース&ブログ)¶097
最近ではポッドキャストの提供も始まっており、それに関するリストもある。¶098
② ベスト国際法ブログ&ウェブサイト40¶099
2 代表的なニュースサイト
① International Law in Brief¶100
アメリカ国際法学会(ASIL)編集。¶101
② Oxford Public International Law¶102
オックスフォード大学出版会の国際公法関連サイトに掲載。¶103
3 代表的なブログサイト
① 国際法学会エキスパート・コメント¶104
国際法学会(JSIL)の活動として行われる一般向けの解説集。ウクライナ問題を直接取り上げるものとしては、本記事作成時点(2023年7月20日)で、保井健呉「国際法における捕虜――ロシア・ウクライナ戦争をめぐって」、山田卓平「対ロシア制裁をめぐる国際法上の論点」、久保⽥隆「ウクライナにおける『戦争犯罪』と国際刑事法」、掛江朋子「ロシアのウクライナ侵攻と武力不行使原則」、根岸陽太「ウクライナ情勢――人道・人権・難民との関係」が掲載されている。¶105
② ASIL Insight¶106
アメリカ国際法学会(ASIL)の活動として行われる、一般向けの解説集。¶107
③ AJIL Unbound¶108
ASIL刊行のアメリカ国際法雑誌(AJIL)を補完するものとして、雑誌論文より短いが時宜を得るものとして、一般向けに書かれるもの。1つのテーマについて多くの論者が書くこともあり、解説というよりは様々な観点が示される点に特徴がある。¶109
④ EJIL:Talk!¶110
ヨーロッパ国際法学会(ESIL)刊行のヨーロッパ国際法雑誌(EJIL)のブログ。記事に対するコメントや関連記事などが機動的に掲載されることにより、議論の場を提供することにもなっている。¶111
⑤ Völkerrechtsblog¶112
ドイツ語圏をベースとするサイト。全世界に開かれ、専門家の交流促進に主眼がある。¶113
⑥ Opinio Juris¶114
2005年創設の老舗。国際法に関する学者、実務家、法律専門家間の議論の促進を目的とする。¶115
4 その他のブログサイト
① Just Security¶116
② Lawfare¶117
③ Articles of War¶118
④ War on the Rocks特設ページ ¶119
①~④とも安全保障に強みをもつサイト。¶120
⑤ 米国外交問題評議会¶121
Explainersの下にブログなどの記事が掲載されている。¶122
⑥ 米国ブルッキングス研究所特設ページ¶123
⑦ 米国戦略国際問題研究所特設ページ¶124
⑧ 米国カーネギー国際平和財団特設ページ¶125
⑨ 英国王立国際問題研究所(チャタムハウス)¶126
⑩ 英国国際問題戦略研究所特設ページ¶127
⑪ ケンブリッジ大学出版会ブログ¶128
*本記事の作成にあたっては、根岸陽太西南学院大学法学部准教授、二杉健斗大阪大学大学院国際公共政策研究科准教授、平野実晴立命館アジア太平洋大学アジア太平洋学部助教の協力を得た。記して感謝します。¶129