事実の概要
国立大学法人であるX(原告・被控訴人・被上告人)は、その雇用する教職員等によって組織された労働組合であるZ(上告補助参加人)に対し、平成26年1月1日から教職員のうち55歳を超える者の昇給を抑制すること(本件昇給抑制)および同27年4月1日から教職員の給与制度を見直して、賃金の引下げをすること(本件賃下げ)について、それぞれ団体交渉(団交)の申入れをし、同25年11月以降、複数回の団交をしたが、その同意を得られないまま、給与規程を改正して、同27年1月1日から本件昇給抑制を、また同年4月1日から本件賃下げを実施した。Z組合は、団交におけるXの対応が不誠実で労組法7条2号の不当労働行為に該当するとして、Y県労働委員会(Y県労委)に救済申立てをした。Y県労委は、不当労働行為に該当するとし、Xに対し、各交渉事項につき、適切な財務情報等を提示するなどして自らの主張に固執することなく誠実に団交に応ずべき旨を命じた。これに対し、Xは、Y(県─被告・控訴人・上告人)を相手に取消訴訟を提起した。原審は、Y県労委の救済命令が発せられた当時、昇給の抑制や賃金の引下げの実施から4年前後が経過し、関係職員全員についてこれらを踏まえた法律関係が積み重ねられていたことなどから、その時点において各交渉事項につき団交をしてもZ組合にとって有意な合意を成立させることは事実上不可能であったとし、仮にXに本件救済命令が指摘するような不当労働行為があったとしても、Y県労委が本件各交渉事項についての更なる団交を命じたことは、労働委員会規則33条1項6号の趣旨にも照らし、裁量権の範囲を逸脱したものとして、Xの請求を認容した。¶001