はじめに
本稿では、令和6年11月1日から令和7年10月31日までの間に出された、刑事訴訟法分野に関係のある裁判例について、最高裁判例を中心として取り上げる。¶001
Ⅰ 捜査
1 長時間の「追従捜査」の適法性
大阪高判令和7・4・25(LEX/DB 25622520)は、覚醒剤取締法違反被告事件(覚醒剤の自己使用)において、同事実の不審事由を認めて職務質問を実施した者について、この者を被疑者とする捜索差押許可状および強制採尿令状の請求を行い、同令状の発付までの間、移動する被疑者を約4時間30分にわたり多数の警察官が追従してその所在確認を継続し、発付された令状により捜索差押えおよび採尿を実施したのち、尿についての簡易鑑定結果が出るまでの間、移動する被疑者を約3時間にわたり多数の警察官が追従してその所在確認を継続し、簡易鑑定結果を踏まえて被疑者を緊急逮捕したという捜査手法には重大な違法があり、その結果を利用して収集した証拠の証拠能力は否定されるべきであるとの弁護人の主張につき、原審の大阪地判令和5・8・1(LEX/DB 25622085)が、「本件に係る採尿や緊急逮捕の手続の過程で、弁護人が違法収集証拠であると主張する関係証拠……の証拠能力を否定すべきような重大な違法は認められない」としたのに対し、「原判決の説示は、被告人に対する一連の捜査が違法ではないとの点については賛同し難い」とした上で、その趣旨を敷衍して「捜査機関としては、被告人による覚醒剤の単独使用であるとの本件事案の性質に照らしても、〔簡易鑑定の結果が短時間では得られなかった段階で〕簡易鑑定の実施はあきらめて追従捜査を打ち切り、本鑑定の結果を待ってから被告人に対する更なる捜査を行うことを検討すべきであったというべきである。結果的に、〔その後にさらに実施した簡易鑑定の〕結果が判明するまでの間、それまでと変わらない方法で、被告人に対する追従捜査を続けたことで、追従等による行動への制約が更に長時間に及んでしまった(職務質問も含めると合計約7時間46分)ことは否定できない」、「以上からすれば、本件における2回に及ぶ追従捜査は、強制処分に当たるとまではいえないものの、被告人の行動の選択を相当程度制約するなどするものであることや、追従捜査の時間が全体としてかなり長時間に及んでいること、簡易鑑定の実施をめぐる対応が追従の長期化に影響を与えていることなどを考慮すると、任意捜査として許容される範囲を超えた違法なものであったといわざるを得ない」とする一方、被疑者の移動の自由に対する制約の程度や、捜査機関の令状主義潜脱の意図のないことを踏まえ、「本件追従捜査は違法であるといわざるを得ないものの、その違法は、令状主義の精神を没却するような重大なもので、それによって得られた被告人の尿及びその派生証拠である本件関係証拠を証拠として許容することが、将来における違法な捜査の抑制の見地から相当でないとはいえず、それらの証拠能力を認めた原判決の認定、判断は、結論において相当である」とした。¶002