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Ⅰ スタートアップ企業のM&A

2022年11月28日に閣議決定された「スタートアップ育成5か年計画」においては、社会的課題を成長のエンジンに転換して持続可能な経済社会を実現するものとしてスタートアップを位置付け、その育成のために「スタートアップのための資金供給の強化と出口戦略の多様化」を大きな3本柱の1つとしています。そして、スタートアップ企業を対象とする買収(M&A)が、スタートアップ企業の成長のためのエグジット戦略(出口戦略)としても、また既存の大企業のオープンイノベーションの推進策としても重要であるとされています。¶001

従前、日本のスタートアップ企業は上場(IPO)によるエグジットを目指す場合が多いと指摘されていますが、IPOを優先することでM&Aによるエグジットの選択肢を逃す可能性や、十分に成長していない状況でのスモールIPOが、必ずしも「成長を実現するためのIPO」とならないといった懸念が示されています1)。このような経緯も踏まえて、東京証券取引所が2025年9月26日に公表した「グロース市場の上場維持基準の見直し等について」においては、「高い成長を目指す企業が集う市場」となるための取り組みとして、上場後に企業の成長が停滞する要因の1つであるスモールIPOの改善に向けて、2030年3月1日以後、東京証券取引所グロース市場の上場維持基準における時価総額に関する基準を、「上場から5年経過後の事業年度の末日において100億円以上」2)に変更する方針が示されています。かかる変更により、東京証券取引所グロース市場への上場を目指すスタートアップ企業には、成長戦略がより強く求められることとなり、同時に、成長を実現するためのM&A3)や、IPOに代わるエグジットの手段としてのM&Aを検討する方向性が促進される可能性があります4)¶002

Ⅱ スタートアップ企業における買収時の取決め

Q₁

スタートアップ企業の買収は、どのような方法で行われるでしょうか?

¶003

A₁

買収者がスタートアップ企業の全ての株式を取得することを希望する場合、典型的には、ドラッグ・アロング権に基づいて買収が行われます。スタートアップ企業の株主間では、投資家の多数が同意する場合に全ての株主に株式譲渡を請求できる権利(ドラッグ・アロング権)や、買収時の対価の分配方法(みなし清算)が合意されていることが多く、買収者は、株主間契約の規律・手続に従って買収を行うことにより、全ての株主から株式を取得し、対価の分配を行うことができます。

¶004