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Ⅰ はじめに

川出先の通常国会(第217回国会)において、「情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律」(令和7年法律第39号)が成立し、一足先に進んでいた民事手続に引き続いて、刑事手続においても、いわゆるIT化のための法整備が実現することになりました。本改正は、刑事手続等の円滑化、迅速化及びこれに関与する国民の負担軽減を図るとともに、情報通信技術の進展等に伴う犯罪事象に適切に対応することにより、安全、安心な社会を実現することを目的とするものとされています。この改正の目的自体は異論のないところだと思いますが、改正の具体的な内容については、改正法の成立に至るまでに開かれた「刑事手続における情報通信技術の活用に関する検討会」(以下「検討会」)、法制審議会刑事法(情報通信技術関係)部会(以下「法制審」)、そして国会における審議の中で多くの議論がなされ、意見の対立も見られたところです。その結果として、当初の案から内容が修正された事項や、結局、法改正には至らなかった事項もありますし、さらには、その議論を通じて現行制度の課題が浮かび上がってきたテーマもあります。¶001