事実
本件は、被告人が、個人として免許を受けないで宅地建物取引業を営む違反行為(無免許営業)をしたという訴因で起訴されたが、法人の代表者として法人の業務に関し違反行為をしたという訴因に変更されたことにつき、訴因変更の可否(公訴事実の同一性)が問題となった事案である。¶001
被告人は、免許を受けないで、業として、建物賃貸借契約の媒介をして宅地建物取引業を営む無免許営業をしたという訴因で起訴され、第1審(大阪地判令和3・7・14刑集77巻7号481頁)で、建物賃貸借契約を媒介した事実とこれを業として営んだ事実を争った。ところが、被告人質問等の審理を経て、無免許営業の主体は被告人個人ではなく、被告人が代表取締役である会社(本件会社)ではないかという疑義が生じ、第1審裁判所は、検察官に対し求釈明をした。そして、無免許営業の主体に関する証拠調べ、被告人質問を経て、検察官は、本件会社の代表取締役である被告人が、同会社の業務に関し、免許を受けないで、変更前の訴因と同一の媒介をしたとする旨の訴因及び罰条(両罰規定に関する宅地建物取引業法84条1号を追加するもの)の変更を請求した。弁護人は異議がないとの意見を述べ、第1審裁判所はこれを許可した上で、変更後の訴因の事実を認定し、変更後の罰条を適用して、被告人を懲役1年、3年間刑執行猶予に処した。¶002