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はじめに

本稿では、令和5年11月1日から令和6年10月31日までの間に出された、刑事訴訟法分野に関係のある裁判例について、最高裁判例を中心として取り上げる。¶001

Ⅰ 捜査

1 勾留時の個人特定事項秘匿措置と憲法34条

最決令和6・4・24(裁判所Web〔令6(し)262号〕、刑事訴訟法1)は、被疑者の勾留に当たり、令和5年の法改正により新設され、令和6年2月15日から施行された刑訴法207条の2第2項に基づき、勾留質問において被疑者に対し、被害者の個人特定事項を明らかにしない方法により被疑事件が告げられた事件において、勾留の裁判に対する準抗告が棄却されたのちに、被疑者の弁護人から、刑訴法207条の2の規定について、被疑者を勾留するに当たり、その理由を被疑事件を特定して告げるものとはいえず、また、被疑者が弁護人に依頼する権利を侵害するとして、憲法34条違反を主張して特別抗告が申し立てられた事案において、「勾留を請求された被疑者に裁判官が被疑事件を告げるに当たり、刑訴法207条の2第2項の規定する、個人特定事項を明らかにしない方法によったとしても、その余の事項から当該被疑事件を特定することができ、また、同条は、被疑者が弁護人に依頼する権利を行使することを妨げるものでもないから、前提を欠き、同法433条の抗告理由に当たらない」として、特別抗告を棄却した。¶002