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Ⅰ はじめに

本特集において本稿に与えられた題目は、「客観的価値秩序論、個人の尊重と平等・再考」であった。この題目が示すように、個人の尊重と平等の法的含意は、個人の具体的権利の保障にとどまるものではない。旧優生保護法に基づき優生手術を受けた者による国家賠償請求を認めた、最高裁令和6年7月3日大法廷判決(民集78巻3号382頁。以下、「旧優生保護法判決」という)においても、憲法13条論は複数の文脈、意味内容で登場する。¶001

本稿の内容を先取りすれば、憲法13条は、①国家の侵害に対抗する主観的権利を基礎づけ、また、②その「精神」ないし「価値」に反する国家の侵害を排除する。さらに、憲法13条は、③「精神」ないし「価値」として、私法規定へと照射し、その解釈・適用を嚮導する。¶002