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事実

本件の争点は複数あるが、本稿では、有価証券の譲渡損益に関する部分に着目して論じる。事実についても、これに関係する部分に限定して述べる。¶001

X(原告・被控訴人)は公益法人として設立されたが、特例民法法人(法人税法上は公益法人等に該当)としての移行期間を経て、平成23年2月3日に非営利型ではない一般財団法人(法人税法2条9号により普通法人に該当)へと移行した。Xは、公益法人時代から複数の銘柄の売買目的外有価証券を取得し非収益事業に属する財産として保有していたが、移行にあたり時価評価する必要があったことから、移行前の最終事業年度における会計処理として評価損を計上した。その後、Xは平成25年3月期から27年3月期までの間に当該有価証券を順次売却するなどしたが、有価証券の譲渡損益については、譲渡対価の額から評価損計上前の取得価額(以下「移行前取得価額」という)を控除した譲渡損失額を損金算入して法人税等の確定申告をした。しかし、処分行政庁は、譲渡対価の額から評価損計上後の帳簿価額(以下「本件各譲渡有価証券処理後価額」という)を控除すべきであったとして、有価証券譲渡益の計上漏れを理由とする更正処分等を行った。Xはこれを不服として、Y(国。被告・控訴人)に対し、当該更正処分等の取消しを求めて提訴した。¶002