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Ⅰ はじめに

われわれがこれまで慣れ親しんできた現金(紙幣・貨幣)は、匿名性をその特徴としており、現金を使用しても、いつ・どこで・誰に対して・何のために・いくらの支払を行ったかについて記録が残ることはない。ところが、近時の普及が目覚ましいキャッシュレス決済では、原因取引に関するデータと決済に関するデータを紐付けることが可能である場合が多い。そのため、このような決済データを有効に利活用した新たなサービスが利用者に提供されることが期待される一方で、利用者の自由やプライバシーなどが十分に守られるかについて懸念も示されている。そこで本稿では、デジタル・キャッシュの利用によって生じた決済データを事業者が利活用することの得失を確認したうえで()、決済データをめぐる法律関係について検討を行う()。¶001