FONT SIZE
S
M
L

Ⅰ 知的財産・知的財産権とコーポレートガバナンス・コード

企業のガバナンスにおける知的財産・知的財産権の重要性が、近年、特に強調されています。知的財産・知的財産権は、競合他社に対する競争優位を生み出すツール(競争力の源泉)であり、知的財産・知的財産権への投資と活用は、企業の持続的な成長に不可欠だからです。ところが、日本は、海外に比して、知的財産・知的財産権の積極的な活用が遅れている、といわれており、各方面で日本の現状への対応が模索されています。¶001

Q1

知的財産・知的財産権は、コーポレートガバナンス・コード(CGコード)において、どのように位置付けられていますか?

¶002

A1

CGコードでは、知的財産・知的財産権は企業の競争力の源泉であるとの認識の下、知的財産への投資等について、その重要性に鑑み、(1)具体的で分かりやすい情報の開示・提供と、(2)取締役会による実効的な監督が求められています。

¶003

1 コーポレートガバナンス・コードの意義

コーポレートガバナンス・コード(CGコード)は、東京証券取引所が、金融庁と連携して、実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめた指針です。上場企業は、CGコードの遵守を義務付けられる訳ではありませんが、CGコードの基本原則のうち実施しないものがある場合には、その理由を説明することが必要です(コンプライ・オア・エクスプレイン〔Comply or Explain〕)1)¶004

2015年6月に適用が開始されたCGコードは、金融庁が2014年に策定した「責任ある機関投資家」の諸原則≪日本版スチュワードシップ・コード≫(最新は2020年3月改訂版)(以下、「スチュワードシップ・コード」といいます)といわば車の両輪の関係に立って、日本のインベストメントチェーン(資金の拠出者から、資金を最終的に事業活動に使う企業に至るまでの経路及び各機能のつながり)を改革し、日本企業による「攻めのガバナンス」を実現することを企図しています。両コードは、その時々の市場環境や、日本企業を取り巻く課題認識等を背景としてアップデート(改訂)を重ねており、CGコードに関しては、直近2021年6月に改訂が行われています。¶005

なお、コードそれ自体の改訂ではありませんが、2024年6月7日に、コーポレートガバナンス改革の実践に向けたアクション・プログラム2024が公表されています2)。CGコード及びスチュワードシップ・コードへの対応状況に関する課題認識を踏まえた今後の指針を示すものであり、各コードを実務に落とし込むに際して参考となる内容になっています。¶006