Ⅰ 破産会社の保有する知的財産権の処理
Q1
¶001知的財産権を保有する会社が破産した場合、破産管財人は、知的財産権をどのように処理するのでしょうか。
A1
¶002破産管財人は、破産した会社が保有していた知的財産権を、第三者に譲渡するなどして、可能な限り高額で換価します。
1 会社が破産した場合の流れ
会社について破産手続開始の申立てがされた場合、裁判所が破産手続開始決定をすると、破産手続が開始されます。破産手続とは、主として、会社に残された資産を換価し、債権者に分配する手続です。破産手続は、裁判所から選任された破産管財人が進行します。¶003
破産管財人が、残された資産の換価と債権者に対する配当を完了させると、破産手続が終結します(破220条1項)。破産手続の終結について公告がなされる(同条2項)と、その時点で会社の法人格が消滅します。なお、配当を行わず、破産手続が廃止された場合には、廃止決定が確定した時点で、法人格が消滅します。その後、裁判所書記官が登記を嘱託し(破257条7項)、会社の法人登記簿が閉鎖されます(商登117条3項)。¶004
2 破産財団に帰属する知的財産権の処理
破産管財人の重要な職責の1つは、破産した会社に残された資産を可能な限り高額で換価し、債権者に分配することです。破産した会社が保有している知的財産権についても、他の資産と同様、破産管財人による換価処分の対象となります。¶005
会社に残された資産を換価する場合、通常、資産を個別に切り売りするよりも、事業を一体として売却するほうが、事業価値が維持され、高額での売却を期待できます。そのため、破産管財人は、個々の資産を含む一体の事業としての売却可能性があると考えられる場合には、可能な限り、事業譲渡等によって、事業を一体として売却する方法を検討することが一般的です。知的財産権は、それ自体が価値を生み出すというよりも、事業と一体となって価値を発揮していることが多いので、知的財産権を多数保有している会社の破産管財人に選任された場合には、特に、知的財産権を個別に売却するのではなく、事業を一体として売却することが望ましいといえます。¶006
もっとも、既に破産に至っている状況においては、事業を一体として売却することが難しい場合も多く、そのような場合には、残された資産を個別に売却する必要があります。この点、知的財産権は、戦略的に活用することによって企業価値を増大させる源泉となりますが、会社が破産し、事業が停止した局面においては、個別の資産である知的財産権の換価が難しいことがあります。¶007