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法学生が、まして実務法曹や公務員ならなおのこと、思いがけず直面する不条理に対して、通常の法知識では事態を打開し得ず、八方塞がって思わず、国家とはなにか、政治とはなにか、法とはなにか、学問としての法学とはなにか、などと途方もない問いを発して呆然とすることはあろう。肩をすくめてやり過ごすか。賢明である。が、不条理に気づいた自分を消せはしない。そのときふと、かの途方もない問いに巻き込まれ向き合った先人が、勁草の如く、歴史上途絶えることのなかったことに気づく。難事件に出くわして先例を紐解く作業を一歩進めて、わたしたちはこうした先人たちの先例を紐解き、不条理に対して考える葦として抵抗することができる。本書はそれに気づいた人に、欠かせない一冊である。¶001