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Ⅰ はじめに

SDGsは環境保護に限られないが、本稿は環境保護に焦点を当てて、EU競争法とわが国の独占禁止法(以下「独禁法」)が、環境負荷の低減や持続可能性の向上(以下これらを「環境利益」)を生む事業者による単独行為をどのように取り扱っているかを概観する。グリーン社会の実現は、公的規制や補助金政策等が主導し、これを競争法・競争政策が補完すると考えられる。グリーン社会の実現に向けた事業者の自主的取組みを促すため、この補完の1つとして、競争法は、事業者による単独・共同の行為について当該行為が生む環境利益とそれがもたらす反競争効果とを総合的に考慮して、前者が後者を打ち消しまたは上回る場合、当該行為を違法としないことがある(正当化)。競争法は、これまで、この正当化をもっぱら事業者間での共同行為について論じてきた。それ故、例えば、支配的事業者が、環境利益を向上させる自社商品の開発・製造販売への先行投資を回収するために取引先との間で長期の排他取引契約を強いる行為や、自社商品の供給に併せて関連グリーン商品の購入を抱き合わせて販売する行為等1)をどう評価すべきかは、いずれの国・地域の競争法でも充分明らかではない。¶001