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刑訴法312条2項は、審理の経過にかんがみ適当と認めるときは、裁判所は訴因変更を命ずることができると定めている。本判決は、その訴因変更命令には形成力がないことを確認した。
被告人Xは、YがAの当選目的で選挙人等に金銭を供与する際に、その情を知りながら、案内や選挙人紹介等の行為をしてこれを幇助したとして、公職選挙法違反(供与罪)の幇助の訴因で起訴された。第1審公判の途中、裁判所は、上記の訴因を「Yと共謀して金員を供与した」という共同正犯の訴因に変更するよう命じ、検察官の請求がないにもかかわらず、訴因が変更されたものとしてその後の手続を進めたうえ、共同正犯の事実を認定してXを有罪とした。これに対して被告人側が控訴したが、控訴審は、本件は訴因変更が不要な場合であるとして、控訴を棄却した。そこで、被告人側は、本件では訴因変更が必要であるところ、裁判所の訴因変更命令に形成力を認めるが如き訴訟進行は「公訴権に介入し、不告不理の原則をも蹂躙するに等し」く、「被告人の防禦権行使に実質的な不利益を及ぼす」などと主張して、上告した。
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