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事実

Ⅰ 事案の概要

本件は、株式会社の代表取締役であった被告人が、同社の経理業務を統括していた共犯者と共謀の上、同社名義の預金口座から、約2415万円を横領したとされる事案である。被告人は、共犯者と共に業務上横領罪で起訴されたが、行為当時、被告人は既に代表取締役を退任して後任者が就任しており、上記預金を占有していなかった。¶001

他人の物の非占有者が業務上占有者の横領に加功した場合について、最三小判昭和32・11・19刑集11巻12号3073頁(以下「昭和32年最判」という)は、非占有者は、「刑法65条1項により同法253条に該当する業務上横領罪の共同正犯として論ずべきもの」であるが、「同法65条2項により同法252条1項の通常の横領罪の刑を科すべきもの」であると判示した。本件では、犯行日から公訴提起までに6年10か月余が経過しており、被告人に対する公訴時効の成否、すなわち、業務上占有者の横領に加功した非占有者について、刑訴法250条の適用において、公訴時効期間の基準となる刑は、業務上横領罪の刑であるか、横領罪の刑であるかが争点となった。¶002