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Ⅰ はじめに
本稿では、労働自体の性質と健康影響、労働時間・労働スケジュール・労働スタイルの健康影響について、紹介する。また、現在の労働時間規制及び健康確保措置の現状と課題を示す。最後に、今後の議論の在り方について考察する。¶001
Ⅱ 労働について──歴史的変遷・健康影響概要・その範囲
1 労働観の歴史的変遷
古代ギリシャや古代ローマでは、労働は下層身分の者や奴隷が担い、市民は自由な精神的活動を行っていた1)。ユダヤ教やキリスト教では労働が苦役や罰とされたが、宗教改革後のプロテスタントでは勤勉さが尊ばれ、資本主義や産業革命の基礎となった。現在のFIRE(経済的自立と早期退職)は、労働に縛られず時間や心のゆとりを追求する生き方で2)、過去の価値観への回帰とも言える。¶002