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事実

本件は、X(債権者・原審相手方・相手方)が、Y(債務者・原審抗告人・抗告人)の有する各売掛債権について差押命令の申立てをし、これに基づき本件差押命令が発せられたのに対し、Yが請求債権の大部分は従前の債権執行手続で既に消滅していると主張して、執行抗告をした事案である。¶001

本件の経緯は、次のとおりである。¶002

Xは、令和3年11月、Yの有する売掛債権について差押命令(以下「前件差押命令」という)及び転付命令(以下「前件転付命令」といい、前件差押命令と併せて「前件転付命令等」という)を得た。前件転付命令等の第三債務者は、前件差押命令の送達を受ける前に、Yとの間で、前件転付命令等に係る売掛債権の一部(以下「本件被転付債権」という)について、その支払のために電子記録債権を発生させていたため、Yに対し、上記電子記録債権の支払をし、Xに対しては本件被転付債権の支払をしなかった。Xは、令和4年1月、前件転付命令等と同一の債務名義に基づき本件申立てをし、原々審(福岡地決令和4・1・31)は、本件差押命令を発した。本件差押命令の執行債権には、前件転付命令の執行債権が含まれていたが、本件被転付債権の額が控除されていなかった。Yは、本件被転付債権は前件転付命令が第三債務者に送達された時点で存在したから、前件転付命令の執行債権は、本件被転付債権の券面額で弁済されたとみなされ、本件差押命令は、超過差押えに当たるとして、執行抗告をした。¶003