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事実

Ⅰ 事案の概要

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Y(被告・被控訴人・被上告人)は、大阪府吹田市内のマンション(以下「本件マンション」という)について、マンションの建替え等の円滑化に関する法律(以下「円滑化法」という)のマンション建替事業を施行する施行者である。本件マンションの区分所有者であったAは、Yに対し、円滑化法75条1号に基づく補償金(以下「本件補償金」という)の支払請求権(以下「本件債権」という)を有していた。¶001

本件は、Aを債務者として本件債権を差し押さえたX(原告・控訴人・上告人)が、Yに対し、本件補償金及びこれに対する遅延損害金を供託の方法により支払うことを求める取立訴訟である。施行者は、区分所有者の所有する専有部分について先取特権、質権又は抵当権(以下「抵当権等」という)が設定されている場合、抵当権等を有する者(以下「抵当権者等」という)の全てから供託をしなくてもよい旨の申出(以下「供託不要の申出」という)がない限り、補償金を供託しなければならず(円滑化法76条3項)、抵当権者等は、当該供託された補償金に対して物上代位権を行使することができる(円滑化法77条)。Yは、Xによる差押えの後、本件補償金について、Aを被供託者とし、円滑化法76条3項を根拠法条とする供託(以下「本件供託」という)をしており、本件供託による本件債権の消滅をXに対抗することの可否が争われた。¶002