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Ⅰ はじめに

ロシアによるウクライナ侵略は、明白かつ重大な国際法違反として受け止められ、国際社会はこれを食い止めるべく、ロシアに対して多種多様な「制裁」措置を講じている1)。いうまでもなく、侵略行為が発生した場合にはこれを鎮圧し、もって国際の平和と安全を維持するために存在するのが国際連合(国連)であり(国連憲章1条1項)、そこで主要な責任を果たすべきは安全保障理事会(安保理)である(同24条1項)。しかし、こと今般の事態に関する限り、安保理が機能するとは誰も期待しなかっただろう。手続事項を除くすべての事項に関する安保理の決定は、その常任理事国の拒否権に服する(同27条3項)。そして、「特別軍事作戦」開始の翌日、ロシアの拒否権行使により、同国を非難する決議案2)は葬り去られた。他の国連機関——国連総会(総会)3)や国際司法裁判所(ICJ)4)——が安保理の機能不全を補うべく行動しているものの、難局を打開するには至らず、ウクライナにおける戦争は長期化の様相を呈している5)¶001