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はじめに

以下では、令和3年11月から令和4年10月までの間における知的財産法に関する裁判例について、注目すべき論点が含まれているものを中心に紹介する。事件番号を表示した裁判例は、令和5年2月下旬の時点で判例集等には掲載されていないが、裁判所ウェブサイトの判例検索システムで事件番号により検索することができる。¶001

Ⅰ 特許法

1 発明該当性

知財高判令和3・12・20(令3(行ケ)10052号)は、「カット手法を分析する方法」との名称の発明について、次のように述べて、これが特許法上の発明であることを否定した。同判決は、「請求項に記載された特許を受けようとする発明に何らかの技術的手段が提示されているとしても、その技術的意義に照らして全体として考察した結果、その課題解決に当たって、専ら、人の精神活動、意思決定、抽象的な概念や人為的な取り決めそれ自体に向けられ、『自然法則を利用した』ものといえない場合には」同法2条1項の「発明」に該当しないと述べ、そのうえで、問題となった発明の請求項に記載された第1ないし第4のステップについて、「全体として考察すると、分析者が、頭髪の知識等を利用して自然乾燥ヘアスタイルを推定し(第1のステップ)、分析の対象となる頭部の領域を選択し(第2のステップ)、セクションに適した分類項目の中から分析者が推定した分析対象者のヘアスタイルを分類し(第3のステップ)、この分類に対応するカット手法の分析を導出する(第4のステップ)ことを、頭の中ですべて行うことが含まれるものである以上、仮に、分析者が頭の中で行う分析の過程で利用する頭髪の知識や経験に自然法則が含まれているとしても、専ら人の精神的活動によって……課題の解決することを発明特定事項に含むものであって、『自然法則を利用した技術的思想の創作』であるとはいえないから、……『発明』に該当するものとはいえない」と結論した。¶002