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Ⅰ はじめに

2018年の北海道胆振東部地震による北海道全域のブラックアウト、2020年の電力価格高騰問題や2022年の「電力難民」問題によって、電力の安定供給に対する懸念が強まった。また、電力市場の健全性や公正性に関しても、2022年に明らかになった旧一般電気事業者間の市場分割カルテルや、一般送配電事業者からの情報漏洩にかかる報道によって、それらが揺らぐ事態となっている。このように電力産業に対する社会的関心が大きく高まる一方で、電力産業の市場構造や取引実態は複雑であるほか、その法的規制の枠組みも大きく変化しており、それらを全体的に把握することは必ずしも容易ではない。そこで本稿では、経済法の観点から、現時点での電力産業の実態と競争政策上の課題を概観することにしたい。¶001