Ⅰ 本稿の目的

男女間の雇用平等の実質的な実現には、ワーク・ライフ・バランス(WLB)支援が欠かせない。育児や介護といったケア労働の負担は女性に偏っており、日本の不均衡の程度は特に著しい。日本企業の人事制度では、企業の要求に応じて柔軟に働くことができる者がキャリアパスや賃金において優遇されるので、ケア労働の負担との兼ね合いから、それに対応できない女性は、上級管理職までのキャリアパスに留まり続けることができない1)。残業規制や労働時間の柔軟化、家族のための休暇・休業制度は、ワーク(稼得労働)とライフ(ケア労働)の調整に不可欠であり、ケア労働の主な担い手である女性の離職やキャリアダウンを抑止するものである(ワーク・ライフ・バランスの第1の意義)。さらに、後述する2021年育児介護休業法(以下「育介法」)改正に見られるような男性によるケア労働の分担を勧奨する施策は、ケア労働の主な担い手とそれ以外の者(「補助的な担い手」や「全く携わらない者」)との間にある量的・質的不均衡を是正し、主な担い手の生活時間を就労時間へと移行させる一助となる(ワーク・ライフ・バランスの第2の意義)。また、ワーク・ライフ・バランス支援法制が求める措置の整備は、職場全体の働き方の見直しを必要とするので、ケア労働の負担がない労働者にもワーク・ライフ・バランスに向けた多様な選択肢を提供するという副産的効果がある。ワーク・ライフ・バランス支援法制の強化は、多様な労働者を包摂しうる公正な雇用環境(employment equity)づくりを牽引するのである(ワーク・ライフ・バランスの第3の意義)。