Ⅰ.「社会国家」と「福祉国家」

社会国家は世界中に拡がりを見せている。本稿はそうした社会国家の実際のありようを観察し、社会国家をめぐる理論の展開をたどりながら、その中で「変わるもの」と「変わらないもの」について考えてみたい。とりわけ本稿が着目するのは、南アフリカ共和国とラテンアメリカ諸国の社会権1)訴訟に関する積極的な司法実践と、それによって喚起されている国際的な議論である。これらの知見は、人権と統治に関する基礎理論の新たな局面とともに、社会国家において自由・平等・参加ないし民主主義といったリベラルな価値が維持されることの重要性をあらためて確認するものである。