Ⅰ.「中道」による「包摂」

天皇と皇后(いずれも当時)が、日本最北の自治体である北海道稚内市から西に約53kmの日本海上に浮かぶ利尻島に降り立ったのは、退位を9カ月後に控えた2018年8月4日のことであった。二人が在位中に訪れた最後の離島となる同島への訪問は、天皇がその2年前に「とりわけ遠隔の地や島々への旅」を「天皇の象徴的行為として、大切なものと感じて来」たと述べていた1)こともあり、地元メディアからは、2泊3日にわたる北海道訪問のクライマックスと位置づけられていたようである。事実、「両陛下が道民と交流した3日間を振り返る」という趣旨の記事では、知的障害者らが働く農園(北広島市)の視察と併せて、しかしそれ以上に「象徴の務め」としての同島への訪問が大きく取り上げられている2)。けれども、この時に二人が北海道を訪問した第一の目的は、「農福連携」の現場を視察することでも北辺の離島を訪問することでもなく、記事ではそれらに比べてはるかに小さくしか取り上げられていない「北海道150年記念式典」への出席であった3)