Ⅰ.はじめに

国際法は、国家領域を物体として把握するのか、あるいは人々が集合的な意思決定を行うための政治空間として捉えるのか。この問いは、第二次大戦後の領域秩序において生じた構造変化と密接に関わっている。領域を単に財物とみなして所有権の論理を当てはめるなら、その使用や処分のあり方は各々の国家に委ねられ、そこでの統治の内実が領域の法的地位に影響を与えることはない。これが伝統的な国際法の立場であったが、20世紀後半における自決権概念の発展は、こうした見方を根底から覆した。国家領域は、人々が自己統治を実現しうるような単位で設定されるべきものとなり、かかる正統性ないし正義の理念に先導される形で、現実の領域秩序が書き換えられていったのである。