Ⅰ.はじめに*)

武力紛争法は冷戦終結後の30余年の間に大きな変貌を遂げたと言われている。1990年代後半には、非国際的武力紛争(NIAC)に適用される国際法の飛躍的発展および武力紛争法の「処罰規範化」の傾向が、旧ユーゴ国際刑事裁判所(ICTY)の諸判例の蓄積や国際刑事裁判所(ICC)規程の採択によって可視化された。また、2001年以降のグローバルなテロとの戦争においては、国際人権法が規律する法執行と武力紛争法が規律する敵対行為の間の法的ギャップが強調され、かかる「グレーゾーン」をシームレスに規律する国際法が求められた。一方でそれはテロリストの処罰という本来国際人権法が規制していた領域に武力紛争法のパラダイムを拡張する効果を持った。他方で、1996年の国際司法裁判所「核兵器意見」を基盤として1)、国際人権法と武力紛争法の関係に関する複雑な議論を招くことになった。こうした傾向は、武力紛争法の「人道化」と呼ばれる、第二次世界大戦直後から生じていた長い過程における急激な飛躍であった2)