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事実

Ⅰ. 事案の概要

本件は、人を欺いて補助金等又は間接補助金等の交付を受けた旨の事実について詐欺罪で公訴が提起された場合において、当該行為が補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(以下「補助金等適正化法」という)29条1項違反の罪に該当するときに、刑法246条1項を適用することの可否が問題となったものである。¶001

補助金等適正化法29条1項は、偽りその他不正の手段により補助金等の交付を受け、又は間接補助金等の交付若しくは融通を受けた者は、5年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科するとしており、同法32条1項には両罰規定がある(以下、両罰規定による場合も含めて「補助金等不正受交付罪」という)。補助金等不正受交付罪の対象となるのは国庫金を財源とする給付に限られており(同法2条1項・4項。以下、補助金等不正不交付罪の対象となる金銭を「補助金」という)、未遂犯の処罰規定はない。補助金等不正受交付罪は不正の手段と因果関係のある受交付額について成立する(最二小決平成21・9・15刑集63巻7号783頁〔以下「平成21年決定」という〕)。¶002