Ⅰ. 本稿の視点――SDGsと法令遵守

持続可能な開発目標(SDGs)は、人間、地球及び繁栄のための普遍的な目標であるが、SDGsそのものによって民間に法的義務が課せられるわけではないため、理念的目標に過ぎないと多くの人が感じているかもしれない。しかし、SDGsを法的拘束力の有無の観点から見るだけでは、その本質を捉え具体的な企業行動に結びつけることは難しい。

SDGsが求める企業の責任や役割は、法令遵守も含め、自らの事業を持続可能にするために、そして私たち人間が暮らす地球の経済と社会が持続可能となるために企業が取るべき行動である。グローバル化したビジネス活動が世界中の多様なステークホルダー(以下「SH」)と社会に与える影響を踏まえて、2030年にあるべき姿に向けたすべての企業の行動が要請されているのである。その意味では、各国の法律の範囲を超えた要請が少なからず含まれ、企業にはある程度中長期的かつグローバルな目線に立って、人権と労働の権利を実現する責任と役割がある。企業はこれらSHとの関与を経て事業を行う現地社会の期待を把握しつつ活動することで、その事業を持続させることができる。