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序章 捜査概説

第2節 捜査の原理

1 強制処分法定主義

D. 「意思の制圧」

(1)対象者の同意¶001

(a)いま一つの要因である「意思の制圧」について見ると、先ず、例えば、捜査官が人の住居に立ち入り、捜索する場合にも、住居主がその立入りと捜索の双方に承諾を与え(同意し)たならば、「処分」とは言えまい。差押目的物を所有者や保管者が任意に提出するなどしたときも、同様である。¶002

その場合の同意ないし任意の提出とは、それがなければ当の処分に伴い侵害されるべき権利・利益(上記の例では、住居の不可侵権やプライヴァシー。任意提出の場合は当該物の占有)をその主体が――当の侵害となる筈の作用(立入りと捜索、任意提出の場合は一時的な占有の取得ないし移転)に関する限りにおいて――放棄することを意味し63)、従って、その侵害ということが抑々問題とならないからだと言っても良い。¶003