Ⅰ. はじめに

著作権の分野においてライセンス契約は非常に重要な契約類型であるが、令和2年改正前の著作権法には、ライセンス取引に関する十分な規定が用意されておらず、例えば、(ⅰ)ライセンス対象である著作権の譲受人が登場した場合やライセンサー倒産が発生した場合に、ライセンシーの保護が十分でないという権利の脆弱性の問題と、(ⅱ)(出版権を措いて)独占的なライセンシーの権利についての定めがなく、独占性の保護が十分ではないという問題が指摘されていた1)。平成30年にこれらを解決する必要性が文化庁委託事業の調査研究2)にて示され、上記(ⅰ)の権利の脆弱性の問題は、早期に改正を行うニーズが確認されたため3)、令和2年著作権法改正における当然対抗制度の導入4)で一定の解決が図られた。他方で、上記(ⅱ)の独占的ライセンシーの保護の問題(独占性の対抗及び差止請求権を付与する制度5)の導入)については、民法法理との整合性等を考慮してさらに検討を続けることとしたので6)、その解決は先送りされている。もっとも、後記のとおり、その後も政府における検討は続けられており、近い将来に改正に向けて一定の方向性が示されることが期待される。そこで、本稿では、令和2年著作権法改正後の独占的ライセンシーに関する問題点を整理して、将来の改正に向けた検討状況等について概観し検討する。