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本書は、刑事弁護の実践的指南書である。評者は、主に刑事裁判を担当してきた元裁判官で定年退官後は大学の教員をしており、刑事弁護の経験はない。評者として適格かの疑問は残るが、「あえて」の依頼と善解し雑駁な感想を記したい。¶001

本書は「『刑事弁護は大変だ』──そうした声を若手弁護士から聞くことは多い」から始まる(2頁)。この背景には、「日本の有罪率は99.9%で、無罪を勝ち取ることは針の穴を通すことより難しい」というイメージも影響していそうであるが、このイメージは必ずしも正しくない。本書でも触れているが、地裁での通常第1審事件における否認率は9%程度である(290頁注2)。この否認事件における無罪率(一部無罪を含む)は、令和元年から令和5年までの平均は3.3%程度となる(最高裁判所事務総局刑事局「令和5年における刑事事件の概況(上)」曹時77巻2号442頁)。つまり、否認事件に限れば30件に1件は主文で無罪が宣告されている。認定落ちを含めると弁護人が実質的に勝っている事件はもっと増えるであろう。日本における起訴基準は欧米と異なり高く、検察官が組織としていわば勝ち試合と判断できた事件のみを起訴していることを考えると、その中で弁護人の弁護活動が功を奏し30件に1件は主文で無罪が宣告されていることこそ、指摘されるべきであろう。このように考えると、刑事弁護は大変ではあるが、十分にやりがいのある仕事といえそうである。本書は、本来やりがいのある刑事弁護について、弁護活動の質をより高め、やりがいをより実感できるものにしようという観点から書かれた優れた指南書である。¶002