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Ⅰ

本書は、デジタル遺品に関するわが国初の研究単行書である。被相続人のSNSアカウントへの相続人のアクセスをめぐるドイツ法の展開を10年間にわたって考察したものである。この問題は、一方では「相続財産の範囲」という相続法上の古典的論点に属しながら、他方では、デジタル遺品が相続財産に含まれるかという、デジタル時代の最新論点でもある。¶001

本書の中心は、ドイツのフェイスブック事件である。それは、死亡した少女のフェイスブック・アカウントへの両親のアクセスを認めたドイツ連邦通常裁判所2018年7月12日判決(以下「本判決」という)をめぐるものである。本判決は、SNS利用契約上の地位が相続財産として包括承継原則(ドイツ民法1922条)に従って相続されると判断し、デジタルデータを、その内容にかかわらず、手紙や日記等のアナログ遺品と同様に扱った。また、死後人格権、通信の秘密および個人情報保護法も、包括承継を妨げないと判示した。¶002