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本書のテーマは、株式会社の「資本制度」である。「資本制度」というタームは、特定の国の特定の時点における法規制を要約するために用いるのではなく、諸外国の法制度の歴史的展開をも包摂し得る概念として捉える限り、これを対象として固定して研究することは非常に困難である。このような作業が一人の研究者の第一論文としてなされ、しかも十分な成功を収めていることは驚嘆するほかはない。¶001

本書が「資本制度」と関わって、日本法について提言するところをまず要約する。対象とされるのは、資本充実原則と資本維持原則である。前者については、現物出資に関わる規制が論じられ、現行規制の意義は、「会社に新たな財産が拠出された」というインフローにかかる情報をもたらすことにあるが、現行の検査役の調査はコストの観点から正当化できないと指摘される(524頁)。後者については、剰余金分配規制が採り上げられる。本書は、注意深く断定的な表現を避けているものの、評者の読むところでは分配規制につき「資本制度」からの離脱を指向しており、具体的には、①「資本制度」を補充する形で支払能力基準を導入する方向性、及び、②「資本制度」に代替する形で支払能力基準を導入する方向性、の2つが提示されている。「資本制度」からの離脱が指向される理由は、単純な整理が可能となるものではないが、(ⅰ)米欧の制度的展開として本書で描写されたところを背景として、(ⅱ)「資本制度」の下では会計制度との調整が必要となりそのコストが無視できないこと(561頁)、(ⅲ)適切な配当制限の水準が企業特有的であり一義的なルール設定になじまないこと(562頁~563頁)、(ⅳ)余剰資金の返還による経営の効率化を妨げる可能性があること(564頁)、などが挙げられる。¶002